かなでと申します。松山ケンイチとオリジナル小説のブログです。要するに日々の萌えについて綴ってます。メールはkenkenken10305あっとまーくyahoo.co.jpまでお気軽にどーぞ☆


by sora10305
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かなでの妄想小説『ザムザ 言葉の王国』第5話

角川文庫の限定ブックカバーからはじまった妄想小説、『ザムザ 言葉の王国』の第5話です。
拙い文章で申し訳ありませんが、よろしければ、読んでやってください。
そして感想などお聞かせください(^^;)
もし興味を持っていただけたなら、第1話~第4話も下のリンクから見て下されば幸いです★

ザムザ 言葉の王国 第1話
ザムザ 言葉の王国 第2話
ザムザ 言葉の王国 第3話
ザムザ 言葉の王国 第4話




ザムザ 言葉の王国

第5話

私と文枝は戸惑いながら、パイプ椅子におっかなびっくり、座ってみた。
長いあいだ椅子としての役目を果たしていなかった、古ぼけたパイプ椅子は、
久しぶりの仕事がきついのか、ぎぎぎぎ・・・と惨めな悲鳴を上げたが、
なんとか私たちの体重を受け止めてくれた。

ザムザは無造作にぼさぼさの頭を掻いた。
錆ついて、ところどころ傷ついたりへこんだりしているオフィス用のデスクの上にザムザの
足が投げ出されている。机の上で組んでいてもなお余っているので、かなり長い足のようだ。
がっちりとした黒のショートブーツを履いていた。大きな金具が左右についていて、紐が通っている。
元が、花盛りを過ぎたチューリップのように広がっていて、黒のスキニーの裾が中に入っていた。

革のコートはどちらかといえば古風なデザインだし、着古してくたびれているし、おしゃれとは
程遠いのに、その足元だけがファッション雑誌から抜け出して来たみたいに現代的で洒落ていて、
私はますますこの男がわからなくなってきた。

文枝は下を向いて、バックのタグをいじっていた。コーチのシグネチャーのトートだ。

しばしの沈黙。
ここがどこなのかわからなくなるくらい、静かで、すべてが淀んでいた。

ザムザは突然足を下ろし、座りなおして、机の上を手で何度か払った。
それから机に肘をつき、指を組んで頬杖をついた。

腕には革ひもをぐるぐる巻きつけたようなアクセサリーがついていた。

「・・・で、ねえちゃんたち、名前は?」
「里中文枝です」
「篠田ゆきです」

また、沈黙が下りた。ザムザは聞いていたのかいないのか、
うなずきもしなければうんともそうかともいわない。
私は問いかけてみた。
「・・・あなたは?」

「知ってんだろ」
「ザムザさん・・・って、お仕事の名前ですか?」
ザムザは目を細めた。
「まあ、そんなところだ」

それ以上聞いても本当の名を答える気はなさそうだったので、私はあきらめた。

「じゃあ、お悩み相談といきますか。悪ぃな、助手が仕事中で、茶も出せないんだが」
文枝が、お構いなく、と言った。なんだか古風な言い方だと思った。
茶って、この、さっきまで足台になっていた、とても人の口に入るものが馴染みそうにない、
錆びついた机の上に置かれる予定だったんだろうか?

ある意味、助手とやらがいてくれなくてよかった。

ザムザは長い指を組み直し、また、そこに顎を乗せた。
貧乏ゆすりでおんぼろの机が揺れていて、こちらにまで震動が来る。

「聞くのはタダ。施術にゃ金がいるけどな」
「せじゅつ?」
私はおもわず聞き返した。施術って、整体マッサージでもするつもりか?
「お前、それ、たぶん骨折っちまうぜ。わりと力強えんだ俺」
え?
「・・・なにがですか?」
ザムザは答えない。私の方を見てもいなかった。何が気になるのかわからないが天井を見ていた。
かと思ったら文枝のほうに視線を戻した。それから気が抜けたような顔をしてあくびをした。

「あの、ザムザさん」文枝が真剣な面持ちでザムザに問いかける。
彼女はとっても折り目正しい性格なのだ。
「私の話を聞いて下さるのはありがたいのですが、これって、その、お時間をとらせた上、
お仕事につながらないかもしれません。私の抱えている問題が、ザムザさんのお力で解決して
いただける種類のものなのかどうかもわからないですし、要領を得ない話になってしまいますし、
もし、その・・・」

ザムザはコートのポケットをあさって、銀色の袋を取り出した。
何かアルファベットが書いてある。袋の表面にはピーナッツや、アーモンドのようなものが描かれている。
お菓子の袋?彼は袋をばり、と大きな音をたてて開封した。そして手をつっこんで、
ピーナッツを何粒かつまみだし、口に放り込んだ。
彼の目線を負うと、ピーナッツの袋の裏面にある、材料や賞味期限等の記載を熱心に辿っていた。

文枝の言葉は完全に途切れた。
ピーナッツをかじる音が小気味よく響いた。薄闇の空間にピーナッツの匂いが混ざっていく。
次にザムザは袋の中を注意深く探って、アーモンドを一粒つまみだし、食べた。
アーモンドをかじる音はピーナッツのそれより重い感じがした。ピーナッツがかりかり、
ならアーモンドはこりこり、だった。

ザムザは、今、私たちがここにいることに気づいた、といった様子で私たちを見た。
「食うか?」
私たちは同時に首を振った。

唐突にザムザの目線は文枝に移った。

「で?」

文枝はびくっ、と身震いした。彼の目線には人の心を抉るような凄味があった。
「なにが悲しいのかな?ねえちゃん」
先ほど名乗らせたはずだが、もう忘れたのか。彼は「ねえちゃん」で通す気らしい。

文枝は俯いた。
「・・・私は友達も少ないし、居場所もなかったんです」

沈黙。
正直いって、友達が、知らない人にそんなことをいう姿を見てはいたくなかった。
なんだかとても痛々しかったから。「居場所がない」っていう悩みが、申し訳ないけど
とっても陳腐な響きを帯びて聞こえたから。
ザムザは素知らぬ顔をして、手についたナッツ類の油分と塩気を払っている。

私は沈黙に耐えきれなくなって、何かを言おうとした。
が、ザムザが眼球だけを動かして、私を制した。
この男は、眼球を、ぎろりと音がしそうなくらい、はっきりした意思をもって動かせるらしい。

「六条さんにお会いするまでは、私は本当にひとりだったんです。」

六条さん?

だが質問をさしはさむことを、ザムザは許さなかった。
彼は文枝をみていなかった。視線は宙をさまよっていた。でも私が何か言おうとする気配を
感じ取ると、眼球で「ぎろり」とやって制した。

文枝はひとこと、ひとことをゆっくりとしぼりだすように紡ぎ、またすぐに黙ってしまう。
なので、必然的に、沈黙がその場の空気を支配する時間が多くなる。

外からは車の通過する音や、人の喧噪や、雑踏の気配が窓を通じて伝わってきた。
このちいさなビルには私たちの他にあとどのくらいの人間がいるのだろう?1階の喫茶店には
何人くらいお客さんがいるんだろうか?ぼんやりとそんなことを考えた。

「っていっても、六条さんには実際にお会いしたことはないんですけれど・・・」

ザムザはまたしても熱心にナッツの袋を探りはじめた。でもお目当てのものが
見つからなかったようで、今度は袋の中をのぞきこみだした。

「・・・『夢殿』にはたくさんお友達がいたんです。みんな、こんにちは、とかこんばんはだけで、
初対面の人でも仲良くなれてしまうんです。私たちには共通言語があるから。」

ザムザはくるんとカールしたカシューナッツをつまみ出し、顎をそらせて、口の中に放り込んだ。

「でももう戻れないんです。何かを間違ったんです、私。セカイは閉ざされてしまったんです。
夢殿を見て、みなさんが楽しそうにおしゃべりしているのを見て、それだけ。私はいないのと同じです」

セカイが失われたとか、確かレストランでもそんなことを言ってた。
なんの世界なんだろう?

「塗籠に、入るべきではなかったんです」

「ぬりごめ」
ザムザはやっと言葉を発した。
でもさほど興味もなさそうだったし、たまたま耳についたから鸚鵡返しにしただけのようだった。

「私には資質が足りなかった。それだけのこと。私ごときが、殿上人になろうとなんて、思うべき
じゃなかったんです。ほんとに、私にはあそこがすべてだったのに」

「だったら、別人になればいいだろ」
ザムザは軽い調子で言った。
「そんなことできません。私にそんな勇気はありません。いつかバレて、六条さんの逆鱗に触れる
に違いないですから」
ザムザは鼻をいじりながら言う。「なーにを恐れてるんだかねえ」
「私は、六条さんが大好きなんです。尊敬してます!!だから恐れる以前に、
騙すなんてありえないんです!!」
文枝は感情を昂ぶらせていた。彼女が、そんな風に誰かに対しての真剣な思いを吐露するのも、
強い調子で反論するのも、初めて見た。

ザムザは口元を歪めた。笑みとも、呆れ顔ともとれる、微妙な表情だった。

続きも読んでくださいな!↓
ザムザ 言葉の王国 第6話
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by sora10305 | 2009-07-27 00:17 | 小説『ザムザ 言葉の王国』