かなでと申します。松山ケンイチとオリジナル小説のブログです。要するに日々の萌えについて綴ってます。メールはkenkenken10305あっとまーくyahoo.co.jpまでお気軽にどーぞ☆


by sora10305
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かなでの妄想小説『ザムザ 言葉の王国』第4話

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創作小説・・・ていうか妄想小説、『ザムザ 言葉の王国』第4話です。
この小説は、角川文庫の限定ブックカバーの写真から始まりました。
右にある、これです。これは書店で密かに捕獲した、販促品ですが(笑)
『変身』の表紙です。この、人を寄せ付けない謎めいた雰囲気。感じの悪い半眼。無精髭。
そして、覗き込んだら吸い込まれてしまいそうなくらい、深い、闇。
これはもしかして、素朴で、真面目で、人の良い松山ケンイチの、引き出しの奥に仕舞いこまれた
重要なファクターなのでは?と、勝手に思ったんです。
是非、そういうのを引っ張り出せるような役柄を演じてみて欲しいなぁと。
そんな妄想から、「ザムザ」というキャラが生まれました。
拙い文章で申し訳ありませんが、よろしければ、読んでやってください。そして感想などお聞かせください(^^;)
もし興味を持っていただけたなら、第1話~第3話も下のリンクから見て下されば幸いです★

ザムザ 言葉の王国 第1話
ザムザ 言葉の王国 第2話
ザムザ 言葉の王国 第3話




ザムザ 言葉の王国

第4話

私と文枝はティファニーの店の前で立ち止まっていた。私は電話している。文枝は困惑した様子で私を見ている。
店の中では何組かのカップルが、アクセサリーの並ぶショーウインドー越しに店員と熱心に話し合っている。休日の昼下がりに、恋人たちがアクセサリー選びに一生懸命になっているのは、至極現実的なことのように思えた。店の前で立ち止まって、目的もなく、知りもしない人と電話している、私の方が非現実的に思えた。

こうして立ち止まっている私たちは、この街の中ではたしかに異質だった。街は常に、目的を持って流れている。通行人も車も。客引きやティッシュ配りは、はっきりとした目的を持って止まっているから、私たちとは違う。私たちは、理由はよくわからないけどその辺の地べたに座っている女の子たちと同じで、異質だった。

「あなたが、『くぐつ師』なんですか?」

電話口から、笑い声が帰ってきた。押し殺したような笑い方だ。

「あんた、俺に用があんのか?それとも、『くぐつ師』に?」

どうやら、相手はまともに質問に答える気はないようだ。

「あなたも、『くぐつ師』も、私は知りません。でも言われたんです。この名刺をくれた女の子に。これは…確かに頼んだものなんだって、私…の友達が。だから電話したんです。」

店のガラスの向こうでは、ちょうど、カップルが指輪を選び終え、お会計をするところだった。男の方がクレジットカードを出した。ゴールドカードだ。

「…隣にいんのか?」
「え?」
「あんたの友達」

文枝の顔を見た。彼女はずっと私を不安げに見ていたので、目が合った。

「はい、います」
「なんであんたが電話してきた?」

それにしても、と、店の中の様子をじっと観察しながら思った。カップルがプレゼントを一緒に選ぶのって確かに合理的ではあるけれど、なんだか奇妙だなと思う。よく考えてみると、女の方が自分の欲しいものを思い描いて、見て、悩んで、その中から自分の気に入ったものを選んで、お金だけ男に払ってもらうんだから、結局ひとりで買い物してるのと同じなんじゃないのかな、お金を払うのが自分でないと言うだけで?果たしてそこに贈り物としての意味なんてあるんだろうか?この場合、男も、お金と同じコメイの存在になっているんじゃないだろうか?

「ただ興味があったんです。この名刺が、通い慣れた駅の、壁にちょこん、と空いた穴みたいに思えて。その穴がどこにつながってるのか、すごく気になったんです」

「…じゃ、来い」

私が黙っていると、声は畳み掛けてきた。

「ネズミみてぇに、その穴を潜って、ここまで来やがれ。ご丁寧に、住所まで書いといてやったんだからな。」
「…あ、ここに行けば、あなたに会えるんですね?」
「さぁな。ここにいるのは、不完全な暗闇だけだぜ」
「不完全な暗闇…?」
「さっさと来いよ。俺は気が短い。さらに言うと電話は嫌いだ。メールとかはもっと嫌いだが。じゃあな」

私が答える前に、電話は切れた。

さっき指輪を買ったカップルが店から出てきた。男も女も満ち足りた顔をしていた。女は自分の選択に満足していたし、男も自分の行動に満足していた。それでも寄り添っていられるのが「幸せ」なのだと、私は感じた。

「ゆきちゃん」
文枝はきゅ、と私の手首を優しく握った。彼女の手の、温度と質感を感じた。
その瞬間、ふと悟った。私たちは、あのカップルよりもずっと簡単に意志疎通ができる。彼らよりもずっと、少ない言葉でわかりあえる。我々の間には打算がないからだ。そして私たちの間にある感情は、決して厚くはないけれど、少なくともある日突然、何もなかったことにされてしまうような種類のものではないはずだ。

私は私が興味を持ったから電話をしてみただけだし、文枝は私を待つために、仕方なく横に立っていただけで、何の事情も飲み込めていないはずだけれど、電話が終わったときには、おかしなことに私たちの間には何か通じるものができあがっていた。

「フミちゃん、行こう。この住所のところへ」
「ゆきちゃん、この、名刺のザムザってひとと話してたの?」
「うーん、名乗らなかったし、よくわからないんだけど来いって言われた」

文枝ははじめて、笑った。ふふっ、と、可笑しそうに。
「名前も顔も知らない人に、会いに来いって言われて、会いに行くの?」

その瞳は、好奇心に輝いていた。そんな文枝を見たのははじめてかもしれない。
つられて私も自然と頬を緩めた。
「うん。」

******************************
住所から場所を割り出すのは簡単なことだ。交番に行けばいいだけだったし、その住所は私達がいた場所からすぐ近くだった。そこには寂れた小さなビルがあった。5階建てで、1階にはカフェがあった。「フレンチトースト600円」「本日のコーヒー・マンダリン」などと書いてある、楽譜のような模様に縁取られた紙がイーゼル型の立て札に貼られていた。店の奥からコーヒー豆を挽く香ばしい匂いが漂ってくる。

ビルの入口に取り付けられた5枚のプレートのうち、下から3枚目と4枚目の2枚が空白だ。1番下には、「喫茶 運命の力」下から2番目には「ファンダメンタル」いちばん上には「有限会社 真田企画」と書いてある。
文枝と私はプレートの前で首を捻る。ビルの入口はすごく狭かった。「喫茶 運命の力」のアンティーク調の扉と(薄暗くて中はよく見えない)、古臭くて錆び付いた小さなエレベーターと、申し訳なさそうに捻れた細い階段がある。

そのとき、私の携帯電話が震え出した。「非通知」と表示されている。出てみると、
「3階だ」
それだけ言って、しかも言い終わった瞬間に切れた。

「3階だって」
私と文枝は目線を交わし、階段で行くことを選択した。錆び付いたエレベーターはなんとなく信用ならないということで合意した。

狭いビルなので、3階に部屋は2つしかなかった。もともとこのビルは日当たりの悪い場所に建っているし、さらにフロアのどこにも照明らしいものがないので、昼だというのにフロア全体が薄暗い。いや、照明はあるにはあるが、機能していない。くすんだ緑色のビニールシートが敷かれた床は、ざらついていて埃がうずたかくつもり、おがくずのようなものまで散らばっていた。歩くとそれらが入り交じって舞い上がった。フロアの隅には木材のようなものが積んである。空気が死んだように淀んでいた。まったく、人の気配はない。あの男は、本当にこんなところで私たちを待っているのか?

左右に重そうな扉があった。どちらもしばらく使われた様子のない扉だ。右側の扉を3回、ノックしてみたが返事はない。さらに3回、やはり返事はない。ドアノブに触れてみると、埃もついてなかったし、金属がつやつやしている。私は文枝の制止も聞かずにノブを回した。扉は以外にあっさり開いた。

扉の向こうには十畳ほどの、さほど広くない部屋があった。中はがらんどうに近かった。家具といえば部屋の真ん中にあるオフィス用のデスクと椅子がひとつだけ、あとはその手前側に置かれたパイプ椅子がふたつ。どれも錆びていた。壁はコンクリートで打ちっぱなしで、鉄骨のようなものが飛び出たり、なにかの配線が剥き出しになったりしている。床にも何も敷かれていない。
部屋に明かりはないが、窓から得体の知れない緑色の光が入ってきて、部屋全体が淡くまだらな緑に染まっていた。

「誰も、いないのかな?」
私の声が淀んだ部屋の空気を微かに動かし、無音の中に沈んでいった。
どちらかといえば保守的なたちの文枝は、身震いして、私の腕に縋り付いてきた。

「ゆ、ゆきちゃん、ここ、何なのかな…誰もいないし、怖いよ…」

私は励ますように彼女の肩をたたいた。

「大丈夫だって!もしかしてあの電話の人、短気だって言ってたし、待ちくたびれて行っちゃったのかな…もう一度電話…あれ?」

名刺がない。さらに、携帯もない。

「ゆきちゃん?」文枝はさらに不安げな様子で私の顔を覗きこむ。

「あれ?どっかに落としたかな…さっき、下で電話に出たし、このビル内のどっかで…」

突然、背後から何かが飛んできた。それは、ひらひらと空気の抵抗をうけながら、私たちの足元に落ちた。何かと思ったら、あの真っ黒な名刺だ。

低い笑い声が背後で響いた。「実体がいるんだから、名前はいらねえよなぁ」
この声、電話の!
私たちは慌てて振り返った。つられて文枝も振り返る。

そこにはいつのまにか、真っ黒な革の長いコートを来た、長身の男が立っていた。
男は細くて長い指で、私の白い携帯電話をつまみあげていた。ラインストーンいりのハート型ストラップと、ピンクのマカロンのストラップがゆらゆらしている。
「あ、それ私の」
男は、いかにも興味なさそうに、携帯をひょい、と宙に放った。
慌ててそれをキャッチする。文枝がとなりで眉をひそめた。
「ひどい…」
しかし彼は文枝の非難を意にも介さず、私をつい、と指して、しれっとした様子で言った。
「姉ちゃん、背後には気をつけな。ずいぶん、お留守だったぜ」

男の髪型はボサボサなのかわざとそうしているのかわからない具合に、あちこちはねていた。染めてはいない。美容院でたまに見る男性ヘアカタログ風に「無造作パーマ」とでも言っておこうか。年齢は二十代半ばくらい。血色の悪さと、鋭い眼光と、皮肉げに歪んだ口元と不精髭のせいか、その容貌は整ってはいるが美しいとは言い難く、なにより大変感じ悪かった。おまけに彼は、体全体に、世の中に何か恨みでもあるかのような障気を纏っていた。

革のコートはおそろしく季節外れだし、男のたたずまいそのものが異様で、現実離れして見えた。魔女、を男にしたらこんな感じかな?とふと思った。魔法使い、でも魔術師、でもない。三角の帽子を被って、杖を持ち、得体の知れない液体で満たされた大釜を掻き回している、あのイメージがふさわしい気がした。

私は名刺を拾って、名刺の文字と、男の顔を見比べながら言った。

「あなたが、ザムザさんですよね?」

「んだびょん」

言葉が聞き取れず、反応に困っていたが、彼はそんな私の様子にはかまわず、
顎で私たちの後方を示した。

「まあ、座れ」

そういえばさっき、実体がどうとか言ってたから、やはりこの男がザムザなのだろう。

「あの」
文枝が、一歩前に出て、ザムザの方に寄った。

「くぐつ師って、何をする人なんですか?私、そんなに…その…お金も…」

「だけんど、なあ、ねえちゃん、あんたは、どうしたいんだ?」

えっ?と小さな声を発して、文枝は身体を強張らせた。
ザムザは身を屈めて、文枝の顎に人さし指で触れ、くい、と上向かせた。
「しゃべりてぇんじゃねぇのか?」

しばし戸惑ったのち、文枝はぎこちなく、頷いた。

ザムザは、すっ、と文枝から身を放し、私の脇を抜けて部屋の中に入っていた。

「しゃべるだけなら、タダだぜお客さん。まぁ、そんなとこに突っ立ってないで、とりあえず座れ。」

ガタガタ、と乱暴な音がする。振り返ると、彼はオフィス用のデスクに座っていた。
机の上に足を乗せて。

続き★↓
ザムザ 言葉の王国 第5話
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by sora10305 | 2009-07-20 19:27 | 小説『ザムザ 言葉の王国』