かなでと申します。松山ケンイチとオリジナル小説のブログです。要するに日々の萌えについて綴ってます。メールはkenkenken10305あっとまーくyahoo.co.jpまでお気軽にどーぞ☆


by sora10305
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かなでの妄想小説『ザムザ 言葉の王国』第3話

かなでの妄想小説、第3話ですーーー!
連休中ちょっと家をあけるので、とり急ぎ更新のみ!

7月20日 更新
・・・慌てすぎていて、いろいろ酷かったので、修正版に差し替えました。
すみませんでした。




ザムザ 言葉の王国
第3話

-東京都新宿区新宿3-×-×-
-くぐつ師 ザムザ-
-090-××××-××××-

私は歩きながら片手で持っている真っ黒な名刺を眺めていた。そこに刻まれた小さな白い活字を、心の中で何度か読み、名刺を持つ親指の爪でその文字をカリカリと引っ掻いた。

この住所、もしかしてこの近く?でも、くぐつ師って?

私と文枝は食事を終えて店を出て、休日の昼下がりの新宿で淀んだ空気を吸いつつ、並んで歩いていた。行き先も決めず、目的も定まらないまま。街は、落ち着いていて人の姿もまばらだった。皆、建物の中に隠れているとでも言うのか?伊勢丹や、紀伊國屋の中には人がたくさんいるのだろうか?私はこの辺りにはあまり来ないのだが、新宿って言うと、もう少しごみごみしているイメージがあった。そういえば、駅ではなく、伊勢丹で待ち合わせようと言い出したのは、文枝だ。彼女はこのあたりに馴染みがあるのだろうか?…と思って聞いてみた。

「フミちゃん、このへんはよく来るの?」

文枝は宙を見上げていた。

私もつられて見上げると、空は今にも雨が降り出しそうにどん曇っていた。

「ううん」
文枝は私を見ようともしないで答える。
じゃあ、今日は伊勢丹に用でもあったの?と聞こうとしたが、その問いは宙に吸い込まれた。
私は弱い人間なので、聞かれないかもしれない問いを発することが、なかなかできない。

・・・文枝は空など見ていなかった。視線をたどると、ビルの巨大な広告パネルにはめられたビジュアル系バンド「BLACK TANGUES」のボーカル、TAITOの顔を見ていた。TAITOはビジュアル系バンドのボーカルらしく、すました顔をしていた。金髪のつんつんした髪型に、ガラスのような青い目をしている。カラーコンタクトか。文枝の視線はいつまでたってもTAITOから外れない。

9月下旬の曇り空の下では夏の気配はすっかり身を潜め、時々冷たい空気が肌をかすめることさえあった。私はジーンズに灰色のボーダーの半袖カットソーに黒の綿ジャケットという恰好だった。寒さを恐れてジャケットかカーディガンばかり着ている。となりの文枝は、白に青い花柄の、丈の長い半袖ワンピースを着ていた。ふんわりふくらんだ袖から、白くて細い腕がすらりと伸びていた。リゾートチックなファッションだ。大きな青いガラスの玉をつないだネックレスがワンピースとよく似合っているが、9月下旬、というよりは7月初旬くらいのファッションに見えた。

そういえばデパートのショーウインドーには毛皮のコートを着たマネキンがいた。今朝、新宿駅から歩いた時に見て、ちょっとびっくりした。9月下旬に毛皮を着るなんて、洋服ってなんのために着るんだっけ?おしゃれはなんのためにするんだっけ?

考えに耽ろうとした矢先、文枝が突然声を発した。

「袖ぬるるこひぢとかつは知りながら おりたつ田子のみづからぞ憂き」

え?、と聞き返したはずだったが、声にならなかった。
文枝は、今にも泣きだしそうに見えた。

ふと、あの奇妙な、レストランの店員を思い出した。幼い顔つきと、くりくりした大きな瞳を思い出した。

『でも、これは間違いなく、あなたが頼んだものなんですよ』

私はまた、真っ黒な名刺を見た。この名刺を文枝が頼んだって?そんなわけない。私はずっと一緒にいた。…ずっと?ああ、確か、1回トイレに行った。その間に?

でもこんなもの、レストランのメニューにあるはずがない。食べ物ですらないし。レストランでメニューにないものなんてふつう頼めないはずだ。食べ物でないものがレジの脇でひそかに売られることはあっても。けれど、食べ物でないものはファミレスでも肩身が狭いみたいで、レジの横で売られている玩具類を見るといつも「かわいそう」と思ってしまう。すごく寂れて、落ちぶれてる感じがするから。

けれど、この「非食べ物」は堂々と、お盆にのせられて、運ばれてきた。「デザート」と呼ばれて。
これがもし、文枝が頼んだものだとしたら、彼女は何を求めているというんだろう?
…というか、本当に彼女はこれを頼んだのか?

聞いてみればいい。すぐ隣にいるんだから。直接聞ける状況にあるのに、聞きもしないで、ひとりでぐだぐだ考えてばかりいるなんて、不自然だ。
「あの」
「その」

私たちは同時に声を発した。視線が、私の持つ真っ黒な名刺のところで交差した。
「それ」
文枝は囁くような小声で言って、指した。指先が震えている。
なんだ、あなたもこれを気にしてたのね。

私は頬を緩ませて、頷いた。そしておもむろに立ち止まると、携帯電話を取り出し、名刺に書かれている電話番号を押した。
文枝は目をまるくしている。
「ちょっと、何してるの?」
私は笑顔で答えた「電話」
4回コール音が鳴ったのち、
「はい?」
と、不機嫌極まりない様子の、男の声が答えた。

何故かあの店員の女の子が出ると思っていたので、少し面食らった。
「…何か用でも?」
畳みかけるように、男の声が、言った。心底、しゃべるのがめんどくさいといった様子だ。
私は挑みかかるように言った。
「用があるから、かけたんです」
喉の奧で笑う声が聞こえる。
「…違いねぇ」
今度は、少し面白がるような調子だった。

続きはここ!↓
ザムザ 言葉の王国 第4話
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by sora10305 | 2009-07-18 09:05 | 小説『ザムザ 言葉の王国』